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多環芳香族炭化水素(PAHs)による大気汚染を生物指標で評価する

 (背景)

化石燃料の使用によって発生する多環芳香族炭化水素(PAHs)による大気汚染が世界的に深刻になりつつあります。PAHsは、化石燃料など、物が燃焼するときに発生し、一部には発がん性があることが知られています。なお、PAHsは、最近話題になっているPM2.5にも含まれている有機化合物であり、複数のベンゼン環をもっていることが特徴です。

 

 

(目的)

本研究では、コケや針葉樹が化学物質を蓄積しやすい特性を利用して、これらの植物を利用したPAHsの評価手法を検討しました。

 

 

(結果)

コケとマツのPAHsの蓄積傾向を比較したところ、マツ葉は分子量の小さいPAHsを蓄積する傾向があり、一方、コケは分子量の大きいPAHsを溜める傾向が強いことが分かりました。

 

 

(考察)

こうした相違がみられた理由について、マツ(維管束植物)とコケの体制の違いが関係していると考えらえました。マツと異なり、コケの葉には気孔がなく、クチクラ(ワックス)がほとんど発達しません。そのため、気孔やクチクラを通過しにくい、分子量の大きな化学物質を容易に吸収してしまう、と推察されます。

その一方、マツは分子量の大きい物質はあまり吸収できないものの、気孔やクチクラを通じて、分子量の小さな物質を効率よく吸収できることが明らかになりました。

 

 

(重要な成果)

マツ葉とコケ。ともに大気汚染物質の指標として有用な植物ですが、そのPAHsの蓄積傾向は異なることが分かりました。この2つの植物を同時に環境指標として用いることで、多角的な環境評価が可能になると期待されます。

PAHsの1種:ナフタレン(複数のベンゼン環あり)
分析サンプル:ハイゴケ
コケの葉の表面:気孔がない。また、大部分が一細胞の厚さしかなく、葉に透明感がある。
マツ葉の表面:気孔(黒い部分)があり、クチクラが発達する
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