コケで身の回りの環境を評価する(コケモニ)
(背景)
PM2.5などによる大気汚染などが深刻になるにつれ、身の回りの環境に関心をもつ人が多くなってきました。しかし、一般に環境を測定するのは専門家以外にはなかなか手が出せず、時間もお金もかかることがしばしばです。
では、自分の身の回りの環境を簡便に調べるためには、どうしたらいいのでしょうか。ここで活躍するのがコケなどの環境の変化に敏感な生物を利用した環境評価(生物指標)です。
(目的)
本研究では、東京の八王子市をモデル地域として、コケ指標を利用した「大気の窒素(N)汚染とその由来の評価」、「大気の乾燥ストレスの評価」を行いました(文部科学省GRENEプロジェクト)。
(結果&考察)
専門的な話は省略しますが、コケの中に含まれるNは大気の窒素濃度と深い関係があります。また、Nの安定同位体比は、窒素汚染が「石油などの燃焼によって生じているか、農業や動物のし尿に由来するのか」判断する指標になります。
一般に大気の窒素濃度を把握するためには年間を通した測定と、高度な分析が必要ですが、コケに含まれる窒素の測定ならば容易に行えます(比較的安価で外注もできます)。
八王子市内の複数の地点でコケに含まれるNの濃度と安定同位体比を分析したところ、市内全体のN汚染の実態を把握することができました。 また、「コケ多様性の評価手法」で提案した生育形を指標として、市内の乾燥ストレスの程度を評価した結果、「窒素汚染が進行している地域では乾燥ストレスも高い」ことも分かりました。
(重要な成果)
生物指標を用いた環境モニタリングは、環境の専門家ではなくても、身近な環境を評価することができる極めて有効な手法です。さらに、こうしたモニタリングは市民の環境に関する関心を高めるため、シビックサイエンス(市民科学)としも効果的だと期待されます。
なお、現在、コケで評価した環境と生態系サービス、生活環境を結び付け、総合的な視点から都市の環境を評価しようという試みが行われています。
- 研究の概要
- 自己紹介
- なぜ、コケ?(一般の方むけ)
- 研究(都市生態系)
- 都市緑地のコケ保全
- 日本庭園のコケ多様性
- コケ多様性の評価手法
- 研究(山岳生態系)
- シカの食害対策とコケ
- 地球温暖化の影響
- 山岳生態系の脆弱性
- 山岳自然公園の適正利用
- 研究(環境動態)
- 大気汚染の評価
- 環境モニタリング
- 地域貢献活動
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コケの生態学(福井県立大学 コケ研究室:大石善隆)